世界的パフォーマンスグループ・ブルーマンに日本人メンバーが加入!異色の経歴を持つ山本怜央の舞台裏
世界中で圧倒的な支持を集めるパフォーマンスグループ「BLUE MAN GROUP(ブルーマングループ)」に、2024年新たに日本人メンバー・山本怜央(やまもと れお)さんが加入しました。青く塗られた無言のパフォーマーたちが繰り広げる、音楽とテクノロジー、コミカルな要素が融合した唯一無二のステージ。その中に、ついに日本人として初めて山本さんが正式に加わることとなったのです。
彼はいかにして世界的エンターテイメントの舞台に立つまでに至ったのでしょうか。その背景には、並々ならぬ努力と、異色とも言えるキャリアが横たわっていました。
演技も音楽も経験ゼロ──社会人から舞台へ
現在28歳の山本怜央さんは、東京出身。ブルーマングループに参加する前は、一般企業でビジネスマンとして働いていたという経歴の持ち主です。舞台の世界で活躍する誰もが若い頃から演技や音楽の訓練を受けてきたわけではありません。山本さんもまったくの未経験からキャリアをスタートさせました。
「実は小さい頃からブルーマンのような舞台には憧れていたんです。でも自分には無理だろうって思っていました」と山本さんは語ります。心の奥底で募る舞台への憧れを抱きながらも、まずは社会人として企業勤めの道を選んだ山本さん。しかし、ふとしたきっかけで舞台の世界に足を踏み入れることになります。
25歳の頃、たまたま観に行った舞台をきっかけに「本気でやりたい」と心に火がついたのです。そこから一念発起して会社を辞め、舞台俳優を目指す生活が始まります。演技、身体表現、音楽、すべてゼロからのスタート。多くの若者が高校や大学の演劇部から経験を積む中で、彼の挑戦はまさに異例でした。
ブルーマングループの厳しいオーディション
世界各国で展開されるブルーマングループの舞台。その出演者になるためには、特に厳しいオーディションに合格する必要があります。パフォーマーたちは一切言葉を使わず、表情、ジェスチャー、リズムによって物語を紡ぎます。そのため、身体的な演技力と、音楽的なリズム感、そして観客との視覚的・感情的な“通じ合い”が何より求められる世界です。
山本さんにとってこのオーディションは大きな関門でした。演技や打楽器演奏の練習はもちろん、無言で観客と“対話”をするという、まったく新しい表現に取り組みながら、2年間以上にわたってオーディションを受け続けました。
「何度も落ちました。本当に、やめようかと迷ったこともあります。でも、どうしてもブルーマンの舞台に立ちたかったんです」
彼は諦めず挑戦を続け、ついに2024年春のラスベガス公演メンバーとして合格。日本人として初のブルーマン公式パフォーマーとなりました。その道程は困難の連続でしたが、粘り強く夢を追い続けた結果、山本さんは世界の大舞台への扉を開いたのです。
「言葉の壁」ではなく、「表現の可能性」へ
ブルーマングループにおける最大の特徴は、“無言であること”。この特性が、言語や文化にとらわれない普遍的な表現力を生み出しています。その舞台にはセリフや説明は一切なく、青く塗られたパフォーマーたちの身体表現と打楽器を中心としたリズム、そしてハイテク演出によって、観る人々の感情を動かす仕掛けが施されています。
山本さんも、「無言であることは不安でもありましたが、逆に“自分の表現力次第でどこまでも伝えられる”という魅力にもなりました」と語ります。「日本から来た」という不安や、言葉によるコミュニケーションが通じない環境へのプレッシャーもありましたが、それを乗り越えた今、彼が得たのは国を超えた表現力でした。
ラスベガス公演でのデビュー、そして未来
山本さんは現在、米国ラスベガスにあるブルーマングループの専用劇場にて、連日観客を驚嘆と笑いに包んでいます。ブルーマンのパフォーマンスは決まった型ではなく、その観客の反応によって毎回進行や演出が異なるのも特徴。まさに“生もの”としての舞台芸術を、毎晩繰り広げているのです。
彼は今後、ラスベガスだけでなく、世界各国でのツアー公演への参加も予定されています。2025年以降にはアジアでのツアーが予定されており、「日本での凱旋公演の可能性もある」と関係者は語ります。
自らの意志で安定したキャリアを手放し、夢に突き進んだ山本さんの姿は、多くの人に勇気を与えています。「挑戦したいけれど、もう遅いかも」「未経験からじゃ無理だ」そんなふうに思っていた人たちに、山本さんの生き方は新たな可能性を見せてくれます。
「人生、いつでもやり直せるし、夢を追うのに遅すぎるということはない。僕は青く塗られてるけど、心は真っ赤に燃えています(笑)」
言葉を使わないブルーマンの舞台で、彼は確かに「人の心を動かす表現者」として輝いています。そしてその背景には、覚悟を持って未経験から飛び込んだ“人間・山本怜央”の物語があったのです。
夢を追うすべての人に捧ぐ、静かで、力強い鼓動が、いま世界中に響いています。