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菊間千乃、メディアと法の垣根を越えた挑戦の軌跡──「報道ランナー」卒業と新たな未来へ

長年にわたり「関西テレビ」の情報番組に出演し、鋭いコメンテーターとして注目を集めていた弁護士・菊間千乃さんが、2024年6月をもってレギュラー出演する番組「報道ランナー」から卒業することを発表し、大きな話題となった。法曹界という専門性の高い業界からメディアの第一線に進出し、視聴者に寄り添いながら鋭いコメントを発信してきた彼女の功績は、単なる芸能人コメンテーターの枠には収まりきらない重みを持っている。

菊間千乃(きくま・ゆきの)氏は、1972年東京都出身。早稲田大学法学部を卒業後、1995年にフジテレビにアナウンサーとして入社した。当時のフジテレビは「女子アナブーム」の真っただ中であり、その中でも菊間アナは知的でしっかりとした印象と華やかな笑顔で人気を集めた。情報番組やバラエティ番組の司会など、様々な番組で活躍し、「めざましテレビ」や「笑っていいとも!」など、朝から夜まで多岐にわたるジャンルで親しまれていたことを記憶している人も多いだろう。

しかし、彼女の人生を大きく変えたのは、アナウンサーを離れ「弁護士になる」と決意したことだ。それは、在職中の2002年、仕事と法律の勉強を両立し、2007年についに司法試験に合格したという点で特筆すべきだろう。人気アナウンサーから法律の専門家へ、しかも30代で新たな挑戦を選び抜いたその決断力と努力には、多くの人が心を打たれた。

司法試験合格後、弁護士としてのキャリアを歩み始めた菊間氏は、第一東京弁護士会に登録し、大手である松尾綜合法律事務所を経て、自ら「菊間法律事務所」を設立。企業法務を中心に、離婚問題・労働問題・遺産相続など幅広い分野で活動してきた。メディア関係の法的知識や芸能人の雇用契約など、過去の経験を活かした新たな領域でも活躍し続けている。

弁護士に転身した一方で、メディアの世界とも距離を置いたわけではなかった。報道番組やワイドショーでのコメンテーターとして戻ってきた彼女は、専門家としての見解を分かりやすい言葉で視聴者に届けてきた。

関西テレビの夕方の情報番組「報道ランナー」では、2017年の番組開始当初からレギュラーコメンテーターとして出演。歯に衣着せぬ発言でありながらも、感情や背景に対する配慮を忘れないバランス感覚や、豊富な法律知識を活かしたコメントで、多くの視聴者の信頼を獲得した。記者会見や政治家の発言、事件の報道などに対しても、「思ったことをまっすぐに、自分の言葉で伝える姿勢」が視聴者に愛され続けてきた。

しかし、今回「報道ランナー」を卒業する決断をした背景には、働き方や生活スタイルの変化、あるいは新たな挑戦への意欲があるのかもしれない。番組中で菊間氏は、「地方の視点でニュースを深堀りする番組に出演できたことは、自分にとって新しい発見がたくさんありました」と感謝の言葉を述べ、「今後も、弁護士としてもひとりの人間としても、社会に役立てるような仕事をしていきたい」と語った。

この節目を迎えた菊間氏の言葉には、これまで自身の人生において何度も「キャリアの転機」に直面し、それを乗り越えてきたからこその重みが宿っている。弁護士としてもメディア人としても、多忙を極める中で、常に誠実に、自分の立場からできることを模索してきた人だ。

また彼女は、近年では女性弁護士としての視点から、ジェンダー問題やハラスメント問題について積極的に発言している。特に労働環境における女性の権利保護や企業の体質改善に関するコメントは、多くの企業関係者にも影響を与えている。企業のハラスメント対応に法律家の立場から具体的な指針を提示したり、SNSなどでの誹謗中傷が引き起こす法的リスクなどについて啓発活動を行うなど、社会への貢献にも真摯に取り組んでいる姿勢が感じられる。

そして、今後の活動にも期待が高まる。彼女はテレビなどのメディアから退くというわけではなく、今後については「また違う形で社会に貢献できることを精一杯やっていきたい」と前向きに語っており、弁護士としての専門性をより活かした活動、あるいは執筆や講演活動など、今後の展開が注目されている。

キャリアチェンジの象徴ともいえる菊間千乃さんの歩みは、現代の「第二の人生」モデルとして、多くの人々に勇気を与えている。特に近年、多様な働き方やライフスタイルが注目されるなかで、「ひとつの会社にしがみつかず、自分自身の軸を見失わずに前に進む姿」は、多くの女性にとっても重要なロールモデルと言えるだろう。

情報化社会の中で、知識や情報が氾濫する今だからこそ、現場の取材や体験を元にした誠実な語り手が求められている。菊間千乃さんが今後、どのようなフィールドで活躍の場を広げていくのか。彼女の「次のステージ」に私たちが注目する理由は、単に知名度や過去の実績ではなく、その根底に流れる真摯な生き方と、未来に向けた希望に満ちているからにほかならない。