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無敗の牝馬でダービー制覇──“異端”の革命児・吉岡辰弥が挑んだ競馬界の常識破り

「競馬界の革命児・吉岡辰弥調教師、“異端”が切り開いた王道――まさかの無敗でGⅠ制覇までの軌跡」

2024年5月26日、東京競馬場に詰めかけた9万人超のファンの歓声が青空に響き渡った。第91回日本ダービー、注目を一身に集めたのは、3連勝で無敗のままダービーに挑んだレガレイラ──その名の通り、「女王のように統べる者」という意味の馬名にふさわしい存在だ。だが、その陰でひと際注目された人物がいる。レガレイラの指揮官、吉岡辰弥調教師。彼の存在は、これまでの日本競馬の常識を根底から覆す「競馬界の革命児」として、多くのファンと関係者の間で話題となっている。

一見、“無名”とも言える吉岡調教師。しかし、そのキャリアは異色の輝きを放つ。

長年、美浦トレーニングセンターで調教師の助手として研鑽を積んできた吉岡氏。助手時代には数々の名馬とともに時間を共にし、目立たぬ存在ながらも確実に技術と知見を重ねていった。そんな彼が2021年、満を持して調教師として独立した。開業直後は、周囲から「まさか成功するとは」と囁かれることもあったと聞く。しかし、彼の調教方針や馬の育成にかける情熱は、瞬く間に結果へと結びついていく。

開業からわずか3年余り、重賞制覇はすでに複数回。その伸びしろは誰の目にも明らかだった。とりわけ注目されたのは、彼の管理する2歳馬たちが見せた圧倒的なパフォーマンス。2023年には、新馬戦から3戦3勝で朝日杯フューチュリティステークスを制したジャンタルマンタル、そして牝馬ながら牡馬に混じってホープフルステークスで優勝したレガレイラ……同年のGⅠ・2歳路線を席巻したのは、いずれも吉岡厩舎の所属馬だった。

そんなレガレイラが迎えた2024年、春。牝馬クラシック路線ではなく、あえて牡馬クラシック路線への挑戦を選んだ吉岡師の決断は、常識的な観点からすれば“無謀”と評されてもおかしくなかった。だが、蓋を開けてみればレガレイラは驚異の末脚で皐月賞の3着に入り、そして迎えた東京優駿──日本ダービーでは、前走での経験と成長を見事に実らせ、牡馬の一線級を相手に堂々の勝利。牝馬としては史上6頭目、64年ぶりとなる快挙を達成した。

この偉業を陰で支えたのが、間違いなく吉岡調教師の信念と手腕である。

「馬の個性を見極め、型に押し込まず、その才能が最大限開花できるように導く」──それが、彼の調教師としての信条だ。近年の競馬界では、調教師が管理する馬の数が増える傾向にあり、効率的なローテーションや厩舎運営が重視される一方で、ひと頭ひと頭の馬と向き合う時間は減少しがちだった。だが、吉岡師はそれとは対照的に、少ない頭数で質を重視した管理を行い、「名前ではなく、能力で勝負する」という理想を体現し続けている。

彼の下には、すでに多くの有力オーナーからの信頼が寄せられている。奇をてらったように見えて、実は緻密なデータ分析と実地観察によって裏付けされた調教内容。調教助手時代に培った観察眼と職人技の蓄積が、開業わずか数年でGⅠ制覇という結果となって表れた。

また、語らずにはおけないのが彼の人柄だ。静かで控えめな口調、決して感情を露わにしない表情の奥にあるのは、馬たちへの深い愛情と敬意。競馬は“人と馬の信頼のバトン”だと語る吉岡調教師にとって、勝利は単なる結果ではなく、馬たちの努力と持てる才能の結晶である。そしてもちろん、この姿勢はスタッフや騎手たちからも厚い信頼を集めている。

レガレイラのダービー制覇後、吉岡調教師はインタビューでこう語った。

「この馬が本当にすごいだけです。何も僕が特別なことをしたわけではない。ただ、彼女がどこまで走れるのか、それを邪魔しない仕事をしてきただけです。」

この謙虚な姿勢の裏に、実際には並々ならぬ努力と信念が隠されていることを、ファンはもう知っている。派手な言動もなく、目立った演出もなく、それでも“勝つ”。それが、吉岡辰弥という男の在り方だ。

今、競馬の世界は過渡期にある。技術の進歩、情報の可視化、トレーニング施設の向上──さまざまな要素が絡み合うなかで、競走馬の仕上げ方にも多様なアプローチが求められている。そうした時代において、吉岡師のように“馬本位”のやり方で突き進む者が脚光を浴びるのは、ある意味で自然な流れかもしれない。

ジャンタルマンタルに続く可能性のある国内外の遠征、またレガレイラの今後──世界を見据えた戦略においても、吉岡厩舎のブレることのない情熱は、今後ますます競馬ファンを熱狂させていくだろう。

そして何より、レガレイラの無敗でのダービー制覇という“偉業”が、様々な壁に立ち向かう若手調教師たち、あるいは競馬界に夢を持つ多くの人々にとって、どれだけ大きな希望となったことだろう。

「常識」や「伝統」という名の枠組みを恐れず、卓越した目と情熱で“王道”を切り開いた、吉岡辰弥──いまや彼の名は、競馬界の未来そのものを象徴する存在になりつつある。