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山本由伸、ドジャースと12年466億円契約 甲子園未経験から“日本最高投手”がメジャーへ

2024年6月28日、プロ野球界に激震が走った。パ・リーグを代表する球団、オリックス・バファローズのエースであり、日本プロ野球界の至宝とも言える山本由伸投手(25)のメジャー移籍が決定したというニュースが飛び込んできたのだ。今回報じられたのは、山本投手がロサンゼルス・ドジャースへの移籍を正式に表明し、その契約内容が日本人選手としては前代未聞と言える12年総額3億2500万ドル(約466億円)という超大型契約であること。まさに“衝撃”と言って差し支えない。

この記事では、山本由伸というひとりの野球選手がどのようにしてこの歴史的契約に至ったのか、そのキャリアの軌跡と、メジャーリーグという新たな舞台での展望について掘り下げていく。

■「甲子園出場なし」からの逆転劇

山本由伸の野球人生は、決して順風満帆ではなかった。1998年生まれ、岡山県出身の山本は、地元の都城高等学校(兵庫県)に進学。名門校ではあったが、山本自身は高校時代に華やかな甲子園の舞台を踏むことはなかった。しかしその投球センスと身体能力を評価され、2016年のドラフトでオリックス・バファローズから4位指名を受け、プロの世界に足を踏み入れる。

プロ入り後は、地道な努力と圧倒的な成長力で頭角を現した。最初は中継ぎとして起用されたが、やがて先発に転向。2019年から2023年までの5年間で3回の最優秀防御率を獲得、3年連続沢村賞、2年連続パ・リーグMVPという偉業を達成。特に2023年の成績は圧巻で、防御率1.21、勝率.857、16勝6敗、奪三振169と驚異的な数字を記録し、投手としての完成形ともいえる域に達した。

■メジャースカウトの熱視線と世界が注目した投球術

山本投手に対するメジャー球団の注目は以前からあった。小柄ながら140キロ台後半から150キロ台中盤のストレートを自在に操り、カーブ、スライダー、フォークといった多彩な変化球を駆使。なにより、その投球術の真骨頂は、「制球力」と「フィールディングの巧みさ」、そして「緩急の使い分け」にある。

2023年のシーズン終了後には、ポスティングシステムでのメジャー挑戦を公言し、ロサンゼルス・ドジャース、ニューヨーク・ヤンキース、ボストン・レッドソックスをはじめとする複数の球団がその争奪戦に乗り出した。メジャー仕様の体力・技術・メンタルをすでに持ち合わせているとされ、“即ローテーション入り確実”な投手という評価は、アメリカ側でも定着していた。

■ロサンゼルス・ドジャースとの契約の衝撃

そんな山本投手が選んだのは、全米でも屈指の人気と実力を誇るロサンゼルス・ドジャース。すでに同チームには、「二刀流」でおなじみの大谷翔平選手が在籍しており、日本人選手としては異例のダブルエース体制が実現するという期待が寄せられている。

契約内容は、12年総額3億2500万ドル(約466億円)。平均年俸は2700万ドルを超え、これはダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)や田中将大(元ヤンキース)ら日本人メジャーリーガーの契約を大きく上回る。しかも年齢はまだ25歳。今後ドジャースでの成績次第では、更なる契約更新や記録樹立も期待される。

この契約金額だけを見ても、山本由伸という選手がメジャーリーグからいかに高く評価されているかがわかるだろう。ドジャース側が非常に長期契約を結んだ背景には、確実性と将来性に対する絶対的な信頼がある。

■“友情”ではなく“プロフェッショナリズム”で選んだ道

山本がドジャース入りを決断した際、一部では「大谷翔平との共闘が決め手だったのではないか」との推測もされた。確かに、大谷選手の存在が安心感を与えた側面はあるだろう。しかし、関係者の談話や山本投手のコメントを見るに、その選択の土台にあるのはあくまでも“プロフェッショナリズム”だった。

「自分が最も成長できる環境」「チームとして勝てるビジョン」「キャリアのピークにあたる数年を誰と過ごすか」—これらを徹底的に分析した結果、山本はドジャースという舞台を選んだのだ。周囲の雑音に惑わされず、自分の投球を次のステージへ昇華させる意志の表れと言えるだろう。

■メジャー初登板はいつか? 新たな物語の始まり

大谷翔平の一挙手一投足が注目される中、もうひとりの“大谷世代”が、静かに、しかし確実にその一歩を踏み出した。ドジャースでの背番号は「18」。これは日本のエースナンバーとも言われ、かつて黒田博樹や前田健太がドジャースで背負った番号でもある。

メジャー初登板は今季中盤とも予想されており、すでに現地メディアやMLB公式も「次世代のサイ・ヤング賞有力候補」として名前を挙げている。また、現在右肘の不安を抱える大谷が投手として復帰する頃には、山本と大谷の“日米Wエース”による先発リレーも夢ではない。

■日本プロ野球の未来へも好影響

山本由伸の活躍は、彼自身のみならず、日本プロ野球の将来にとっても大きな意味を持つ。これまで日本人投手のメジャー移籍というと、「野茂英雄の快進撃」や「松坂大輔の挑戦」「ダルビッシュの猛進」など、成功と失敗の物語が交錯してきた。しかし、25歳という若さ、3年連続の四冠王、そして万全なコンディションでの移籍は、新たな成功モデルとなる可能性を秘めている。

後に続く選手たちにとって、山本の“冷静かつ戦略的な決断”と“実績に裏付けされた評価”は大きな希望となるだろう。

■最後に:夢はいつも、挑戦の先にある

将棋界の藤井聡太、フィギュアスケートの鍵山優真、サッカー界の久保建英…令和の若き才能たちは、10代から20代のうちに世界へ羽ばたいている。山本由伸も、紛れもなくその一人だ。

改めて注目すべきは、彼の言葉ではなく行動力。甲子園未出場、ドラフト下位指名、そして3年連続先発三冠と3年連続沢村賞。どれもが努力の蓄積であり、たやすく語れる道ではない。そして今、彼はアメリカという大海原に漕ぎ出した。

野球には夢がある。山本由伸の、静かだが重く確かな一歩は、その夢がいまも現実のものであることを、我々に強く教えてくれている。