2024年6月現在、日本の国民生活や経済活動に大きな影響を及ぼしてきた「暫定税率」について、政府がその廃止を早ければ来年2025年4月にも実施する方針であることが報じられました。この動きは、多くの国民にとっても関心が高く、家計や暮らしに直結する重要なテーマです。本記事では、「暫定税率」廃止に向けた政府の方針のポイント、暫定税率そのものの仕組み、これまでの経緯、そして廃止による影響についてわかりやすく解説していきます。
暫定税率とは?その概要と背景
「暫定税率」とは、もともとは一時的に設けられた税率のことを指し、特にガソリン税や軽油引取税などの石油関係諸税において適用されてきました。正式には道路特定財源制度の中で運用されており、「本則税率」に対して、「暫定的に上乗せされた税率」という位置づけです。
例えば現行のガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)では、本則税率が合計28.7円であるのに対して、暫定税率ではさらに25.1円が上乗せされ、合計で1リットルあたり53.8円が課税されている形となっています。つまり、暫定税率の存在があることで、ガソリン1リットルの価格の中に追加で25円以上の税が含まれているという形です。
この「暫定税率」は、1970年代の石油危機などを受けて必要な道路インフラを整備する資金源として設けられました。その後も必要性が訴えられ、一度は2008年に期限切れで失効したものの、同年に復活し、現在に至るまで維持されてきました。
なぜ今、「暫定税率」廃止が検討されているのか?
今回の報道によれば、政府は早ければ2025年4月にこの暫定税率を廃止する方向で検討を始めたということです。背景には、長年にわたり課せられてきた負担に対する国民の声や、燃料価格の高騰が家計に与える影響への配慮があります。
また、昨今の世界的なエネルギーの供給不安や国内の物価高、加えて景気回復の兆しがまだ本格化していないことから、消費者の実質的な負担を軽減し、個人消費を活性化させたいという政府の思惑が垣間見えます。
さらに、大きな方向性として「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」への取り組みの進展も、暫定税率廃止の背景にあると考えられています。これは、脱炭素社会を目指す中で、「石油製品を使い続けると税金の負担が増える」という従来の構造からの転換を示唆する部分もあるでしょう。
ユーザーへの影響はどうなる?
暫定税率が廃止されることで最も直接的な恩恵を受けるのは、ガソリンや軽油を日常的に使用している消費者、そして運送業や製造業などの燃料コストが事業経営に直結する事業者です。
仮に現行の25.1円(ガソリン税の場合)の暫定分が全て廃止されるとすると、ガソリン1リットルあたりの価格が約25円下がることになります。例えば、1台の車で月に100リットルのガソリンを消費するとすると、毎月2,500円、年間で最大30,000円もの節約が可能になる計算です。
ただし、実際のガソリン価格には原油価格の変動や為替の影響、その他の市場要因も大きく影響するため、すべてが価格に反映されるわけではありません。また、小売業者の価格設定や流通コストなども関係してくるため、「25円そっくりそのまま下がる」と期待しすぎるのではなく、一定の価格緩和効果があると客観視することが大切でしょう。
財源不足と今後の課題
一方で、暫定税率が廃止されることで、国の税収は年間でおよそ2兆円の減収となると言われています。これは決して小さな額ではなく、従来この税収が充てられてきたインフラ整備や維持管理、さらには環境対策にも影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
これに対して、政府内では財源の確保に向けた議論が進められており、一部の報道では、道路関係予算の見直しや他の税収構造の再設計も検討されている模様です。
大事なのは、必要なインフラ整備や公共の安全が損なわれることがないよう、持続可能な財政運営のもとで新しい制度が設計されることでしょう。また、エネルギー政策や脱炭素社会に向けた取り組みとバランスをとりつつ、多くの国民が納得できる改革が求められています。
過去には反対や混乱も
あらためて振り返ると、2008年に暫定税率が一度失効した際には、ガソリンスタンドで価格が急に下落し、それを狙った「駆け込み給油」などで社会的な混乱が生じたことも記憶に新しいところです。また、石油連盟や道路族とも言われる声を中心に、暫定税率の継続を望む声も根強く存在しています。
今回の廃止方針についても、現場からは賛否の声が上がっており、国民の生活への影響を最小限にとどめるための周到な準備とタイムライン設計が不可欠です。
今後のスケジュールと私たちにできること
現在、政府では暫定税率の廃止に向けた最終調整を進めており、早ければ秋の臨時国会でも法案の提出が視野に入っています。正式な決定には財務省や国土交通省との調整が必要ですが、流れとしてはすでに本格化しているようです。
私たち国民にできることは、このような税制度の変化に注目しながら、自身の暮らしや消費行動に照らし合わせて考えていくことです。例えば、燃料代が下がることで自動車の利用が増えるかもしれませんが、その分環境への配慮も忘れてはならないでしょう。
また、今後、再生可能エネルギーの導入や公共交通の活用など、暮らしの選択を見直すきっかけにもなり得ます。税制は私たちの日常に密接に結びついています。だからこそ、「知ること」からすべてが始まると言っても過言ではありません。
おわりに
暫定税率は、長年にわたって私たち国民の生活とともにあり、賛否両論を伴いながらも社会基盤の維持や整備に貢献してきました。今回の廃止の動きは、その時代的役割が一区切りついたとも言える一方で、次なる税やエネルギー政策の在り方を問う転換点でもあります。
今回の動きが実際に法律として定まるまでには、まだクリアすべき課題も多く、政府・企業・市民が一体となって新しい社会のビジョンを共有していくことが求められます。今後の続報に注目しつつ、私たち一人ひとりが、「持続可能な社会とは何か」を考える機会として捉えられれば、税制の見直しもより意味のある改革となることでしょう。