スペイン・ラ・リーガで活躍する日本代表MF久保建英選手が、所属クラブレアル・ソシエダでのシーズン後に語った「地獄のようだった」という言葉が、大きな注目を集めています。プロフェッショナルとして世界の舞台でプレーし続ける中で彼が体験した苦悩と葛藤、そしてそこからの学びとはどのようなものだったのでしょうか。今回は、久保建英選手のコメントをもとに、彼が直面した困難と、その背景にあるチーム状況、そしてそこから見えるプロの厳しさについて、深く掘り下げてみたいと思います。
■久保建英が「地獄」と語ったシーズン
2023-2024シーズン、久保選手はリーグ戦序盤から卓越したパフォーマンスで注目を集め、絶対的な存在感を発揮していました。同シーズン前半だけで、ゴールやアシストといった数字以上に、試合の流れを作る動きや圧倒的な突破力が光り、チームの攻撃の軸となっていたのです。
しかし、年が明けた2024年初旬から、状況は一変します。アジアカップ参加による長期離脱と、それに続くコンディションの低下、さらにはチーム全体のパフォーマンス低下が相まって、自身のプレーにも陰りが見られるようになります。チームの成績は下降し、久保選手自身も思うような貢献ができない苦しい日々が続きました。
こうした流れの中で、彼が「地獄のようだった」と語ったのには、決して大げさな表現ではない心の叫びがあったと考えられます。日々自身と向き合いながらも結果が出せず、チームとしての連帯感や戦術的な意図も噛み合わない中での連戦は、彼にとっては精神的にも肉体的にも極限状態だったのでしょう。
■「責任を取らなければいけない人が…」
久保選手の発言には、チームに対する苦言とも受け取れる表現が含まれており、注目を集めました。特に記者会見で、「責任を取らなければいけない人が責任をあまり取っていないように感じた」と発言したことは、多くのファンやメディアの耳目を引きました。
この発言に政治的な意味合いを持たせることなく受け止めれば、久保選手なりの誠実さと、より良いチーム環境を築いていきたいという熱意の表れと言えるでしょう。日本でもおなじみの「和を重んじる」文化の中にあっても、欧州のトップリーグで生き抜く選手たちは、時に自己表現を明確にしなければならない場面があります。特に、競争の激しい環境においては、選手一人ひとりの責任感や意識がチームの明暗を分けることになるため、久保選手が強い言葉を使うことも納得できます。
■「誇れる成績ではない」からこそ得た気づき
レアル・ソシエダは今シーズン、チャンピオンズリーグ（CL）や国内リーグにおいて安定した成績を維持できたとは言い難く、久保選手本人も「誇れる成績ではないシーズン」と振り返っています。一方で、それをあえて公の場で振り返り、現実を直視する姿勢には、大きな成長が見られます。
スポーツ選手にとって、「勝つこと」「うまくいくこと」はもちろん重要ですが、逆境や困難から何を学ぶかも、同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素です。久保選手は、この薄氷を踏むようなシーズンを通して、自己の内面を深く掘り下げ、自分自身だけでなくスタッフやチームメイトとの関係性を再構築する必要性に気づいたようです。
また、彼の言葉からは、自らのパフォーマンスだけではなく、チーム全体の戦術や意識、運営にも目を向けていることがうかがえます。これは単なる一選手を超えた視点でチームを見つめている証拠であり、今後より高いステージでリーダーシップを取っていくことが期待されます。
■シーズン終わりの感情とこれからの展望
会見の終盤で、久保選手は「もう少しまともに終わりたかった」とも語っていました。このコメントには、悔しさと同時に、未来への意志が宿っているように感じます。終わり方に納得がいかないからこそ、その悔しさを次に繋げ、より高みを目指す覚悟がにじんでいます。
来シーズン、久保建英がユニフォームをどのチームで着ているか、それは現時点では明らかではありません。ですが、一つ確かなのは、今回の困難なシーズンが、彼のキャリアの中できっと意味のあるものとなる、ということです。
苦しい時期を経験したからこそ得られた学びと成長は、目に見えない形ながらも確実に彼の糧となり、今後の活躍につながっていくことでしょう。
■ファンとして、我々にできること
選手たちがシーズンを通して見せるパフォーマンスの裏には、私たちが想像する以上の苦労があります。試合の90分だけでは語り尽くせない準備、トレーニング、身体のケア、そして精神的プレッシャーも含め、トップアスリートの日常には多くの負荷がかかっています。
そんな中で久保選手が勇気を持って自身の思いや苦悩を言葉にしたことは、私たちファンが彼の人間性により深く共感し、支えていくきっかけになるのではないでしょうか。
一喜一憂することもスポーツの醍醐味ですが、選手が困難に直面しているときにも寄り添い、応援し続けることが、ファンとしてできる大きな支援であることを忘れてはなりません。
■おわりに
久保建英選手が「地獄」とまで語った今シーズン。その言葉の裏には、自らとチームを愛するがゆえの葛藤と、さらなる成長への覚悟が込められていました。プロの厳しさを正面から受け止めながら前に進もうとするその姿勢は、多くの人々に勇気と感動を与えてくれます。
これからも久保選手がどのように進化していくのか、注目せずにはいられません。そして私たちは、どんな時でも、彼の歩みにエールを送り続けていきたいものです。
