「ジャニーズが変わる日」中居正広が語った“忖度なし”の覚悟と28年ぶりの再開―タレントとして、男としての真価
中居正広が28年ぶりに生放送で“あの男”と対面した。その瞬間は特別な意味を持っただけでなく、時代の歯車が大きく回った瞬間でもあった。タレントとして、リーダーとして、そして人として波乱と葛藤に満ちた歴史を歩んできた中居が、ここへきて真正面から語り出した“忖度しない姿勢”と“タレント観”は、多くの視聴者の胸を打った。
■SMAP元メンバーが地上波で生共演、認め合う関係の今
6月2日に放送されたTBS系の音楽特番『音楽の日2024』で、MCを務める中居正広がゲストとして登場した香取慎吾と生放送で対面した。このシーンは、1996年のフジテレビ系『SMAP×SMAP』以来、地上波での生共演が28年ぶりという事実以上に、多くの人にとって感動を呼ぶ象徴的な出来事となった。
二人の関係性については、SMAP解散後から現在に至るまで、度々注目されてきた。2016年のグループ解散以降、ジャニーズ事務所に残留した中居と、新事務所「CULEN(カレン)」を立ち上げた香取・草彅・稲垣。交わることがなかった彼らの接点に大きな“壁”を感じていた視聴者も多かったはずだ。
だが、そこに現れた二人はごく自然に、長年のブランクを感じさせない軽妙なやり取りを交わしていた。カメラの前で腹を割って言葉を交わす中で、視聴者は、「SMAP」というグループの“終わり”ではなく、“繋がりの形”を新たに認識したのかもしれない。
■中居正広という男の“リーダー観”
中居正広は1972年生まれ。1986年、13歳でジャニーズ事務所に入所、後にSMAPの中心メンバーとして活躍する。歌手・俳優・司会など多彩なフィールドで結果を残し、特にバラエティ番組や情報番組での歯切れの良いトークと、的確な進行力で“ジャニーズ初のオールラウンドMC”として独自の地位を築いた。
彼のリーダーとしての資質が最も表れていたのは、グループ内での立ち位置と、その後の選択にある。SMAP解散という、国民的グループが終焉を迎える中で、表舞台に立ち続け、沈黙を選んだ仲間たちの代わりに言葉を発し、決して誰かを責めず、自ら矢面に立つ覚悟を見せたのが中居だった。
その姿勢は2020年にジャニーズ事務所を退所し、「のんびりなかい」という個人事務所を設立して以降も変わらない。忖度せず、圧力にも屈せず、それでいて誰かを貶めることのない絶妙なバランス感覚。今回の香取慎吾との再会とトークは、そんな中居の“人としての度量”が再確認されたシーンでもあった。
■変わるテレビ、変わる芸能界、中居が示す“忖度しない道”
中居は今回の番組で、「忖度しない」と明言した。この言葉は、これまでの芸能界ではタブー視されがちな対立、関係性、立場の違いに敢えて切り込むことへの覚悟と読み取れる。
長年、ジャニーズ事務所の“壁”として語られてきた「圧力」や「共演NG」。だが、それを中居のような大きな存在が当たり前のように飛び越え、「テレビとはこうあるべき」「これが視聴者が観たい真実だ」と体現してみせたことは意味が大きい。むしろ、今の時代に求められるのは、表面的なギャグや仮初めの和解ではなく、“本物の対話”であり、“その人らしさ”による信頼なのだ。
視聴者やファンの多くが今回の再会に感動し、あるいは「これが本来のテレビのあるべき姿」だと感じた背景には、いまのテレビ・芸能界への疲弊と、リアルな人間関係を求める想いがあったからだろう。
■「また、会える」というあり方
香取は番組後、「またね」と笑った。そこに確約はない。だが、そこに込められた「可能性」という名の希望に、多くのファンが心を重ねた。
画面の向こうで静かに、されど確かに抱擁を交わすような二人の関係性の今は、SMAPに青春を過ごした世代のみならず、机の前でテレビを眺めていた子どもたちの心にも、深く響いたに違いない。
そして、それを実現させたのは、中居正広という男の、人に流されず、自らの言葉と心で生きる“誠実さ”だった。
今、中居正広は芸能界という枠組みを超え、「あの人が言うなら信じられる」と思える数少ない存在となりつつある。忖度しない、でも思いやりは忘れない。その絶妙なバランスで、これからも多くの人の道しるべとして、生き続けてゆくだろう。
「再会」は確かに奇跡だった。しかしそれは、“待つ人”がいたからこそ起こせた奇跡であり、“動いた者”がいたからこそ形になった現実でもあった。
テレビの向こうで静かに手を差し伸べた中居正広の姿は、今も多くの人の記憶に、優しく、温かく、焼きついている。